50歳以上過半数社会のビジネスチャンスとは? Vol.4
私は連載1回目で、シニアビジネス苦戦の大きな要因は、60歳以上を一括りに考えていることだとお伝えしました。これは売り手側が40代リーダーを中心とした若い世代であり、シニアをひとまとめに捉えているからです。私はこの考えを「60歳以上十把一絡げ論」とセミナーなどで紹介しています。
実は30歳当時の私も同じ考えでしたが、現在は平均寿命が大幅に伸びて超高齢化社会(健康長寿社会)を迎えています。各世代のニーズに応えるには、生まれ育った時代背景を理解し、若者世代と同様に細分化して捉えることが重要です。
まずは①戦前・戦中世代。現在79歳以上の後期高齢者世代です。戦争体験を経て社会人になり、1960年代の高度経済成長に尽力した私の親世代です。戦後の物(モノ)がない時代を体験していることから、消費に慎重で「必要なモノを買い、大切にする」世代。娯楽も少なかったため、「遊ぶ術を知らない」世代でもあります。
次に②団塊・ポスト団塊世代。今年69歳から79歳の世代です。この世代が社会人になった1970年代は日本市場も成熟期。モノが普及して、彼らの家族は「ニューファミリー」と言われました。そして、「もっと良いモノが欲しい」という欲求から、マーケティングは差別化が始まります。ただ、この時代は学生運動が盛んで、男性はその後に企業戦士となり遊ぶ術を知りません。一方、女性は雑誌「an・an、non・no」の影響を受けた「アンノン族」に代表される、新たな遊び方とライフスタイルを男性より先駆けて実践します。現在のシニア市場はこの世代の影響力が強いため、「女性のほうがアクティブ」とみられています。
それに続く③ABS世代は、昭和30(1955)年から43(1968)年頃までの生まれ。今年、55歳から69歳の世代です。物心ついた頃からテレビやクルマがあり、大学進学率も向上し、雑誌「JJ」や「POPEYE」、映画「サタデー・ナイト・フィーバー」の3大インパクトで多くの若者が遊び、やがてバブルを体験した世代です。ABS世代は「モノを買ってコト(事=体験)をどう消費するか?」という“価値体験”に対価を払う消費傾向があります。
これまでシニアビジネスは「健康・旅行・孫消費…」といったキーワードで市場形成されてきました。しかし今後は人や社会と関わり、自分の価値を人に提供することで承認欲求を満たす「生きがいのある社会、新しい大人市場の需要創造」が大きなテーマだと考えます。
博報堂生活総合研究所は「トキ(時)消費」という言葉を提唱しました。これは若い世代だけのものではありません。バブル期のABS世代の「コト(事)消費」傾向をさらに進化させ、「今この瞬間に価値がある!人と価値を共有して、さらには人に影響を与えたい!」というニーズを満たすモノやサービスの提供が、人生100年時代のシニアビジネス、そして新しい大人の社会活性化のカギを握るでしょう。
【ABS世代】
昭和30年から43年頃までに生まれた、高度経済成長期に幼少期を過ごし、若い頃にバブル景気を体験した、人生100年時代の新しいシニア世代。
株式会社ワントゥワン
顧問 / 鈴木 準