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「ABS世代」の気づきは復活ディスコにあった!

50歳以上過半数社会のビジネスチャンスとは? Vol.3

 

 学生の頃、1980年前後にディスコに通い音楽が大好きだった私(鈴木)は、39歳(1999年)から遊びを再開しました。ちょうどその頃は世の中でディスコカルチャーが復活し始めた時期です。

 それ以降20年通い、お客さんのすそ野が拡がってきていることに気が付きました。私はマーケッターとして「なぜディスコに再び人が集まっているのか?」と興味を持ち、人間観察やヒアリングを始めました。その結果わかったことは、ダンスや音楽が本当に好きなマニアは私のような少数派。多くのお客さんはディスコに来ることで「気持ちが若くなる・ドキドキする」、そんなニーズを満たすために来ているのです。

 ニーズとは「欲求」です。マーケティングセミナーで、「炎天下の砂漠をさまよう汗だくの男性がいます。さて、彼のニーズは?」と質問すると、ほとんどの人は「水」と答えます。しかし、この場合の答えは「一刻も早く喉の渇きを潤したい」が「ニーズ=目的」であり、水は「ウォンツ=手段」なのです。

 ニーズを満たすことの原点を間違えてはいけません。手段である商品特性を先に説明したり、ディスコの場合であればお店の特徴などを広告で訴求しても、顧客は「買いたい・行きたい」とは思いません。「どんなニーズを持つ顧客に、どんな価値を伝えて、ハッピーにするか?」を見極めることこそがマーケティングの真髄なのです。

 ディスコに再び舞い戻ってくるお客さんは女性が多いようです。子育ても終わり、お孫さんがかわいいという方もいらっしゃいます。彼女たちは「社会的役割をいったん終えた、一人の人間・一人の女性」として自分はまだ心身ともに若く、これからも人生の楽しみや生き甲斐があることをディスコで認識するのです。孫の前では「おばあちゃん」でも、彼女たちも一人の自立した「女性」なのです。

 ディスコでは、若い頃に聞いた音楽で最初は懐かしさを覚えますが、決してノスタルジーに浸っているのではありません。ディスコの空間に入ることで脳内からオキシトシンやドーパミン、通称「ハッピーホルモン(幸せホルモン)」が分泌されることで心身ともに高揚するのです。これは、南カリフォルニア大学がパイオニアの、エイジングの学問である「ジェロントロジー」でも、脳科学的に論証されています。

 ABS世代の女性は若い頃、雑誌「JJ」を読み、オシャレをして遊びに出かけ、ユーミンの曲を聴きながら彼氏のクルマで海やスキーに繰り出したという人が少なくありません。男性はこうした女の子にモテようと雑誌「POPEYE」をマニュアルにしてお金を使ったのです。そしてバブルの頃のディスコには「お立ち台」がありました。これこそが、「承認欲求」が他の世代よりも高いABS世代の価値観の象徴です。

 このように考えると、「ドキドキ・ワクワク・ハッピー」の人間が求める本質的なニーズを満たす価値の提供、市場の創造に「新時代のシニアマーケティング成功のカギ」が必ずあります。

【ABS世代】
昭和30年から43年頃までに生まれた、高度経済成長期に幼少期を過ごし、若い頃にバブル景気を体験した、人生100年時代の新しいシニア世代。

【えとき】
復活ディスコで発見したABS世代

 


株式会社ワントゥワン
顧問 / 鈴木 準