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新たな社会や市場開拓に苦戦する3つの理由

50歳以上過半数社会のビジネスチャンスとは? Vol.1

新たな社会や市場開拓に苦戦する3つの理由

少子高齢化といわれて久しいですが、総務省が2023年の「敬老の日」に発表した65歳以上の高齢者人口推計によると、9月15日時点の高齢者は3,623万人。総人口に占める割合は前年比0.1ポイント増の29.1%で過去最高を更新。80歳以上は前年比27万人増の1,259万人で、初めて「10人に1人」に達したました。こうした社会で日本企業は「シニア市場」開拓に注力しています。しかし、いずれも苦戦しています。

 私は2019年から本格的にシニアビジネスの企画に関わり始めましたが、このビジネスが「難しい・お金にならない」とされる理由は3つあると考えます。

 一つ目は、これまでのシニア市場はニーズが薄かったことです。戦前・戦中生まれの世代は「倹約が美徳」という考えの人が多く、お金を積極的に使いません。続く団塊・ポスト団塊世代(昭和20年代生まれ)は、女性はアクティブですが男性はリタイア後の生き方を見いだせず、消費に大きな影響を与えるに至っていません。「お金はあっても使わない」結果として、市場としての魅力度は小さいという現実があります。

 二つ目は、売り手側の構造的な問題です。日本企業のほとんどは40代が部長やリーダーを務め、20代や30代の部下とチームを作ります。そのチームがシニア向けの新規事業や新商品を考えても、シニアの本質や実態は経験していないので分かりません。雇用延長した60代社員がいる会社でも「組織の壁」は厚く、現場とベテランの情報共有はできていません。

 三つ目は、シニアを「十把一からげ」や「固定観念」で捉えていることです。シニアといえば、「健康、旅行、孫がかわいい、あとは介護・終活でしょ…」と一括りにしてしまうのです。最近見たある大手企業のシニア調査も、「50歳から79歳を対象」としていました。こうした大括りの市場調査では、各世代のニーズを喚起するビジネスはできません。

 2020年以降には、昭和30(1955)年生まれが「65歳=前期高齢者」となり、それ以降は、高度経済成長期に生まれた世代が続々とシニア世代になっています。昭和35(1960)年に生まれた私は、マーケティングプランナー・コンサルタントとして、さまざまな企業のモノやサービスを売る企画に携わってきました。仕事の内容に加え、組織に属していないこともあり、自分がまもなく前期高齢者と呼ばれる実感がわきません。同じ思いの人は多いと思います。

 そもそも、「シニア・高齢者・老い」という言葉は一般名称であり、生活者向けに使う言葉ではありません。特に1980年代後半のバブルの影響を受けた「昭和30年生まれ」以降の世代は、今までのアクティブシニアよりもさらに若く、特有の価値観を持っています。この世代が新たなシニア市場を形成し世の中を変えるのです。私はこの世代を「ABS(アクティブ・バブル・シニア)世代」と名付けました。


株式会社ワントゥワン
顧問 / 鈴木 準